平均原価法

同一銘柄の有価証券を何回かに分けて購入した場合、売却した場合

同一銘柄の有価証券を何回かに分けて購入した場合、有価証券の帳簿価額は平均原価法によって求めた単価を用います。

3級で学習した売買目的有価証券は1回購入の1回売却のケースのみでした。本当はこのような1回購入1回売却のケースというのはかなり稀で、企業内では、実は個人では到底マネができないような、凄まじいほどの量と回数の売買を繰り返しているんですね。そのなかで同じ銘柄の有価証券を再度購入したりするというのはあたり前に起きる話なんです。そうなれば1回目のときの購入単価と2回目ののときの購入単価も当然違ってきたりします。

このページでは同一銘柄の有価証券を何回かに分けて購入した場合、売買目的有価証券の帳簿価額をどのように決めたらいいのか、というお話になります。

といってもなにか難しいことをするわけではなく、有価証券の平均をとって一株あたりの単価を求めるだけです。近いイメージだと簿記3級のとき商品有高帳で学習した、移動平均法のような感じです。あの時は商品の品質が変化しないという理由で倉庫にあった商品もあとから仕入れた商品も後先関係なく扱っていましたね、あのイメージと同じです。

平均原価法

平均原価法とは取得原価合計を、総株式数または債権の口数で割り、求めた平均単価を帳簿単価として計算する方法です。

平均原価法の計算式

  • 平均単価=
    • 1回目の取得原価+2回目の取得原価+…
    • 1回目の株式数(または購入口数)+2回目の株式数(または購入口数)+…

売却した時の帳簿価額◎平均単価×株式数(または債券の口数)

とまあ、とりあえず公式は書きましたが、こんなのはいちいちおぼえなくていいですよ。取得原価合計を総株式数で割って、割った答えは平均単価、これでいいと思います。

  • 例題
  • 次の一連の取引の仕訳をしなさい。

    (1)5月20日 日本株式会社は売買目的でA株式会社の株式500株を、1回目に1株あたり450円で300株を、2回目に1株あたり500円で200株を当期中にすべて購入している。本日A株式会社の株式100株を@480円で売却し、代金は月末に受け取ることとした。なお売却した有価証券の原価の計算は平均原価法による。

    (2)3月31日 日本株式会社は、本日決算をむかえたので、売買目的で保有する株式について評価替えを行った。A株式会社株式の期末時価は430円であった。

(1)

  • (借方)
  • 未収
  • 48,000
  • (貸方)
  • 売買目的有価証券
  • 47,000
  • 有価証券売却益
  • 1,000

(2)

  • (借方)
  • 有価証券評価損
  • 16,000
  • (貸方)
  • 売買目的有価証券
  • 16,000

考え方のポイントとしては

  • ・取得原価がそれぞれ購入したごとにわかるか
  • ・平均単価の計算ができるか
  • ・代金は後日とあるので未収金勘定がすぐ思い浮かぶか
  • ・有価証券売却益・売却損がもとまるか
  • ・有価証券評価益・評価損がもとまるか

が例題を解くポイントになります。

売買目的有価証券勘定を使用するというのは簿記3級のときと同じですし、有価証券売却益・売却損と評価益・評価損を使用するというのも3級で学習した内容と全く同じです、平均単価をもとめることができれば解答できますね、思いだしながら解いてみましょう。

平均単価の計算

まず1回目の取得原価は@450×300株135,000円

2回目の取得原価は@500×200株100,000円

合計 235,000円

期中の売買目的有価証券の取得原価は235,000円で500株あるということになります。このとき付随費用があれば取得原価に含めるんでしたね。

平均単価は

  • 平均単価
    • 135,000円100,000円
    • 300株200株
  • @470円

このことから、平均単価は一株あたり470円と求まります。また、売買目的有価証券の勘定口座はこうなります。

売買目的有価証券
(略)135,000
(略)100,000

売却の処理

5月20日に日本株式会社は上で求めた一株あたり470円の株を、100株@480円で売却しました。

売却価額は@480×100株48,000円で、代金は後日とあるので未収金勘定を使います。

売却した時の帳簿価額は@470×100株47,000円、平均単価を使うんですね。

そのときの差額は1,000円で、損益は売却価額>帳簿価額ですから貸方売却益になり、これによって有価証券売却益が1,000円になります。

売買目的有価証券
(略)135,000未収金47,000
(略)100,000

期末の処理

3月31日、日本株式会社は決算をむかえました。売買目的有価証券は決算になった段階で時価で評価替えをしなければならなかったのでした。評価替えは取得原価と時価を比較して取得原価<時価なら評価益、取得原価>時価なら評価損がたちます。

期末の時点で日本株式会社が持っている売買目的有価証券は1株あたり470円で400株保有している状態です。

期末にA株式会社株式の時価を調べたら、@430円になっていました。値段が下がっていますね。というわけで評価損だということがわかり、次に評価損の金額を求めます。

金額は(@470@430)×400株16,000円

よって有価証券評価損が16,000円と求まります。売買目的有価証券の勘定口座は、

売買目的有価証券
(略)135,000未収金47,000
(略)100,000有価証券評価損16,000
残額172,000

ちなみに問題では聞かれていませんが、日本株式会社の貸借対照表に載る売買目的有価証券の帳簿価額はいくらかわかりますか?135,000+100,000-47,000-16,000=172,000になります。またこの金額は@430×400株で172,000円としても求まるんですね。このことから売買目的有価証券の貸借対照表価額は期末時点の時価×株式数(または口数)が貸借対照表に表示されることになるということが言えます。

売買目的有価証券・追加購入の一連の流れは追えたでしょうか?追加で購入した場合はその後の取得原価に影響があるだけで、売却損益や評価損益は3級の時と変わらない仕訳をすることになります。