総合原価計算はまだ続きます。いままでの総合原価計算は、単純総合原価計算についての学習でした。つづいては等級別総合原価計算を学習します。
等級別総合原価計算とは
等級別総合原価計算とは、1つの同じ製造工程から作られる同じ種類の製品を製造していて、形や大きさ重量や厚さなどが異なる製品を、大量生産する場合に適用される総合原価計算の方法をいいます。
どういうことかというと、簿記の参考書でよくたとえに出されるのが、Yシャツの製造です。★1Yシャツの製造は1枚の長い布から、1つの同じ製造工程(ベルトコンベアのイメージ)で、Sサイズ、Mサイズ、Lサイズとサイズの異なった製品を作っています。
この同一の加工で、サイズ(大きさ)の違う同種製品を大量生産している場合に適用される原価計算が、等級別総合原価計算になります。等級別総合原価計算の等級という意味は、S、M、Lなどのサイズのような上下や優劣の順位を表す段階という意味で、形や大きさ重量や厚さや品質などによって区別できる製品を等級製品といいます。
総合原価計算の種類
総合原価計算の基本のページでも紹介しましたが、もう一度確認です。
- ・単純総合原価計算 単一製品1種類のみの原価計算
- ・工程別総合原価計算 同一製品2工程以上の原価計算
- ・等級別総合原価計算 同種複数製品の原価計算
- ・組別総合原価計算 異種複数製品の原価計算
前節で学習したものは、製品の種類が単一であることが前提の単純総合原価計算で、今回は複数同種製品を製造していることが前提の等級別総合原価計算になります。総合原価計算はいろんな種類があるんだな程度でいいです。
等級別総合原価計算の考え方
等級別総合原価計算の考え方の考え方ですが、まず前提として、製品1つの原価を求めることが目的です。そして、S、M、Lのサイズ違いのYシャツがあるとして、材料は同一行程で共通のものを使って生産しているということですから、3種類の製品ごとの違いは、シャツを作るときの生地の長さが違うというだけです。
このことから、Sサイズ1つとMサイズ1つの別の等級ごとの原価は、同じではないが一定の比率で発生していることがわかり、また、Sサイズのシャツ1つと、他のSサイズのシャツの同じ等級の原価は、同じ工程で生産された同種製品ですから、計算上は同じように扱ってもいいと考えられます。単純総合原価計算の同じ考え方で、数量で割ればいいんですね。
なので、製品全部の原価をそのまま単純に数量で按分することはできないが、異なる他の等級は、原価が分量に比例して発生しているのがわかるので、大きさや量や重さなどの何らかの基準によって原価に割合をつけて計算することが可能だと考えます。Yシャツを例えにしてお話ししましたが、複数同種製品を製造している企業ならジュースでも牛丼でも当てまりますね。
同じ等級の場合 | Sサイズ | ←ほぼ一定の発生額→ | Sサイズ | 数量で割る |
異なる等級の場合 | Sサイズ | ←ほぼ同じ比率で発生→ | Mサイズ | 比率を掛けて割る |
等級別総合原価計算の考え方は、同じ等級は数量で割り、異なる等級は、大きさや量や重さなどの何らかの原価発生割合の基準で積数の比を求めて計算することになります。
等価係数と積数
等価係数とは、等級製品に原価を配分する際の、サイズや重さなどの基準によって基準を1としたときの原価の負担割合のことを言います。異なる等級の場合、原価をどれくらい負担させるか、何対何なのかという比率のことです。
等価係数の基準は、製品の性質によって決まります。Yシャツなら生地の長さだったり、牛丼ならグラム量、特盛り1に対して大盛り0.7、並盛りは0.6、という具合に等価係数を決めます。
積数は等級製品ごとの完成品数量に等価係数をかけた値をいいます。
積数は、例えば牛丼がそれぞれ100個ずつ生産されたとして、等価係数が、特盛り:大盛り:並盛りに対して、1:0.7:0.6だとして、積数は特盛り100、大盛り70、並盛り60になり、この積数の特盛り1の数量に対して並盛りも同じ数量1として原価を負担できるようになります。
等級別総合原価計算の計算方法
等価係数や積数がなんとなくわかって頂けたと思うので、等級別総合原価計算の例題を解いてみましょう。
- 例題
当社は製品を大量生産している。次の資料にもとづいて、平均法により、各等級製品の完成品原価、完成品単位原価を計算しなさい。
[資料]
1.生産データ 月初仕掛品 30個 (60%) 当月投入 90 合計 120個 月末仕掛品 50 (60%) 完成品 70個 2.原価データ 直接材料費 加工費 月初仕掛品 26,000円 18,000円 当月投入 274,000円 220,000円 括弧内の数値は加工進捗度を示す。
材料はすべて工程の始点で投入している。
完成品70個はMサイズ40個 Lサイズ30個に区別される。
等価係数は次の通りである。Mサイズ:Lサイズ=1:2
Mサイズ 完成品原価 円 完成品単位原価 円
Lサイズ 完成品原価 円 完成品単位原価 円
解答
Mサイズ 完成品原価 136,640円 完成品単位原価 3,416円
Lサイズ 完成品原価 204,960円 完成品単位原価 6,832円
この例題を解く場合は、完成品原価を求める必要があるので、前の章の単純総合原価計算でやったことがわかっていないと解くのはキビシイです。続きになっているんですね。
等級別総合原価計算の解き方は、完成品原価を求めて等価係数を用いて積数を計算して、各製品の完成品原価を求めるという手順です。
まず、平均法の完成品原価を求めます。サクッとボックスを作ります。
30 (18)26,000 (18,000) | 70175,000 (166,600) |
90 (82)274,000 (220,000) | |
50 (30)125,000 (71,400) |
ボックスの書き方ですが、ボックスは直接材料費と加工費2つ別々に書いていましたが、1つにまとめました。その際、材料費のデータと間違わないように、加工費側のデータには括弧をつけるようにしています。これは自分ルールで、簿記の試験でも時間の節約のため、私はこう書いて解いています。仕掛品とか当月投入とかも書きません。慣れたらどんどん省略していきましょう。
(直接材料費)平均単価:(26,000円+274,000円)÷(30個+90個)=@2,500
(直接材料費)月末仕掛品:@2,500×50個=125,000円
(直接材料費)完成品原価:26,000円+274,000円-125,000円=175,000円
(直接材料費)完成品原価:@2,500×70個=175,000円
(加工費)平均単価:(18,000円+220,000円)÷(18個+82個)=@2,380
(加工費)月末仕掛品:@2,380×30個=71,400円
(加工費)完成品原価:18,000円+220,000円-71,400円=166,600円
(加工費)完成品原価:@2,380×70個=166,600円
完成品原価 175,000円+166,600円=341,600円
完成品原価をもとめるまでは、総合原価計算の平均法のときと同じです。いま求めた341,600円は全体の完成品原価になります。
次に等級製品に振り分けます。完成品がMサイズ40個、Lサイズ30個の計70個ですが、70個でそのまま配分してはいけないんですね。等価係数がMサイズ:Lサイズ=1:2ということなので、積数を計算します。
Mサイズ:40×1=40
Lサイズ:30×2=60
この積数は、Lサイズが実際の生産量の倍の60個を負担することを意味しています。なので各等級製品の完成品原価は、
Mサイズ:341,600円×40÷(40+60)=136,640円
Lサイズ:341,600円×60÷(40+60)=204,960円
また、各等級製品の完成品単位原価は
Mサイズ:136,640円÷40個=3,416円/個
Lサイズ:204,960円÷30個=6,832円/個
完成品単位原価は積数で割ってはいけません。積数は原価を配分するときに使う計算上の数量ですから、実際の完成した数量で割って単位原価を求めます。
ということで等級別原価計算ができました。ポイントは、完成品を求めて積数をかけた数量で、原価を配分することです。