未渡小切手
未渡小切手は前ページでお話したように、何かの支払いのときに小切手を振出したけれども、まだ相手に引き渡してない小切手です。
何らかの支払いをするため小切手を振り出す処理をし、このとき企業は当座預金勘定を減少させる仕訳をしています。しかしまだ小切手を取引先等に渡していなかったため銀行側では引落しの処理をされることはなく、銀行の当座預金口座残高は減少しません。企業側の当座預金勘定は減らしたのに銀行側の預金口座は減っていない、おかしいぞという状態になり、企業側と銀行側の当座預金残高は一致せず、不一致の原因になります。
この仕訳はなかったことと考え取り消す修正仕訳をします。そして不一致は解消されます。
未渡小切手
小切手振出(支払い)
A株式会社
B株式会社
記帳済・未渡し
未受取り
小切手
この未渡小切手の場合の銀行勘定調整表の調整処理は
- 企業側
- 加算、(修正仕訳をします)
- 銀行側
- 修正なし
となります。
未渡小切手の修正仕訳について注意点
未渡小切手を修正仕訳するさいに、負債を決済するために振出したものか、費用や固定資産の購入代金を支払うために振出したものなのかで、貸方の科目が変わります。
負債を決済するために振出したものは実際に支払いは行われていないので単純にいつもの反対仕訳をします。
費用や固定資産の購入代金を支払うために振出した場合の修正仕訳は、未払金勘定で処理します。貸借逆にするという考えは同じですが費用や固定資産代金支払いの場合、科目が未払金に変わります。
☆買掛金の支払いとして振出した小切手が未渡しだった場合
振出時
- (借方)
- 買掛金
- ×××
- (貸方)
- 当座預金
- ×××
修正仕訳
- (借方)
- 当座預金
- ×××
- (貸方)
- 買掛金
- ×××
☆広告費支払いのために振出した小切手が未渡しだった場合
振出時
- (借方)
- 広告費
- ×××
- (貸方)
- 当座預金
- ×××
修正仕訳
- (借方)
- 当座預金
- ×××
- (貸方)
- 未払金
- ×××
と修正仕訳をします。なぜ費用や固定資産の購入代金支払いの修正仕訳をするとき未払金勘定を使うのかというと、費用や固定資産の代金支払はすでに役務の提供を受けているので戻すことができないからです。簿記の原則として当期に発生した費用は当期の費用として計上するという原則があってこれに反するからなんですね。もし仮に貸方広告費を認めてしまうと、貸方広告費は言い換えると費用の取消しを認めてしまうということですから、例えば決算日の前後をまたいで費用の計上を翌期にズラすなんてことができてしまい、利益操作が可能になってしまいます。
こういった理由から、発生した費用は当期の費用として、この場合借方広告費で計上したままにしておき、そのかわりに未払金勘定を負債としてたてておく処理をしているんですね。
こうすれば損益計算書には広告費が記載され、貸借対照表には未払金が記載され当期純利益をキチンと把握することができます。
理屈をいえばこのようになりますが、わからなかったら「反対仕訳の時、費用だったら未払金」の暗記でいいと思います。
連絡未通知
連絡未通知は銀行側で当座預金振込や当座預金引落しがあったにもかかわらず、企業側に連絡がされていない状態をいいます。
銀行側で実際に売掛金の入金や自動引き落としなどの出金があり、口座残高が変化した原因があるのですが、企業側へその連絡がまだ届いていない状態です、これを連絡未達といいます。連絡未達は企業側と銀行側お互いの当座預金残高のズレを生じさせ、不一致の原因になります。
連絡未達の場合どのように処理をするのかというと、銀行側の当座預金口座に入金があれば企業側も帳簿残高を加算する修正仕訳をし、また銀行側の当座預金口座から出金があれば同じように企業側も帳簿残高を減算する修正仕訳をします。企業側は銀行側がした取引と同じ内容の仕訳をするんですね。
連絡未通知
連絡なし
A株式会社
××銀行
未処理
預入・引落し処理済
この連絡未通知の場合の銀行勘定調整表の調整処理は
- 企業側
- 加算または減算、(修正仕訳をします)
- 銀行側
- 修正なし
となります。
誤記入
企業が銀行へ預入れた時や引出したときなど、間違えて仕訳をしてしまうことを誤記入といいます。
企業が誤って記入をしたとき、企業側と銀行側の当座預金勘定と当座預金口座は当然一致しません、不一致の原因になります。
企業が仕訳を間違えたわけですから、企業側で修正が必要になり、修正仕訳は3級で学習した訂正仕訳を行います。
誤記入
誤記入
A株式会社
訂正仕訳は大丈夫でしょうか?
このようにして訂正仕訳を求めます。この連絡未通知の場合の銀行勘定調整表の調整処理は
- 企業側
- 加算または減算、(修正仕訳をします)
- 銀行側
- 修正なし
となります。
不一致の原因まとめ
不一致の原因 | 仕訳 | 企業側当座預金 勘定残高 | 銀行側銀行残高 証明書残高 |
---|---|---|---|
時間外預入 | なし | - | 加算 |
未取立小切手 | なし | - | 加算 |
未取付小切手 | なし | - | 減算 |
未渡小切手 | あり | 加算 | - |
連絡未通知 | あり | 加算または減算 | - |
誤記入 | あり | 加算または減算 | - |
この表をおぼえてしてしまえば銀行勘定調整表関連の問題はほぼ対応できるようになると思います。
修正仕訳が必要なのは未渡小切手と連絡未通知、誤記入の3つで、この3つは企業側の当座預金勘定残高を加算減算させる要因になります。逆にそれ以外の3つは仕訳はしなくて銀行側を加算減算する要因になるといったところでしょうか。
どれを加算減算させるのかは不一致の原因を考えながら判断するしかありません。