現金過不足

現金過不足についてです。

実際に業務をこなしている時、とりわけ現金は出し入れが多いので、金庫の中の実際の金額と、帳簿上の金額、帳簿残高がどうしても合わない事態がおこったりします。その時、考えられる原因は、

計算の桁を間違え、10,000を1,000にしてしまった。

本来「売掛金」と勘定記入するべきところを、現金と記入してしまった。

仕訳をするのを忘れてしまった。

お金を多く支払ってしまった。(これは最悪です)

などといった、記入ミス・計算ミスが考えられますが、仕訳のチェックをしてもどうしても合わない時は、「現金過不足」勘定を使い、現在の現金の実際残高に一時的にあわせる処理をします。
帳簿上の金額をいじって調節する形になります。

なぜこのような処理をするというと、これは簿記の目的が、「企業の財産状態と儲けを知るため」に記録をしているからでしたね。
財産状態を正確に記録しなければなりませんから、そのための仕訳です。常に実際の金庫の中にある現金の手許残高にあわせることがポイントです。

どのタイミングでどのような簿記処理をするのかを確認しながらおぼえていってください。ポイントは3箇所あります。

「過不足がわかった時」-「解決したとき」└「決算をむかえた時」

の3つです。

現金過不足時の処理

発覚した場合の勘定処理

実際残高が少なく現金が足りない事がわかった時、帳簿残高を今ある財産状態にあわせます。というわけで

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

と調整するための仕訳をします。実際残高<帳簿残高なので、帳簿上の現金を減らすという考え方です。

逆に、てもとにある現金の実際残高が多くあまってしまった場合、この時は、自分のポケットにしまわず(汗)

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

実際残高>帳簿残高なので帳簿上の現金を増やす仕訳をします。

帳簿上の現金を、現金過不足勘定に振り替えたという形になります。現金過不足勘定科目は帳簿上の金額と実際の現金の金額の不一致を一時的に処理するための仮の勘定科目なので、資産、負債、純資産、収益、費用の勘定のいずれにもなりません。

原因が判明した場合の勘定処理

現金過不足勘定処理をしたあと、2、3日してから「そういえばあれは買掛金の支払いだったな・・」なんて思い出したりすることもあります。
そういう時はもとに戻さなければなりません。

考え方としては、現金過不足勘定は原因がわかるまでの間、一時的に調整する仮の勘定ですから、もとの適正な仕訳をした時と同じ状態になるように戻す処理をすればいいんですね。

具体的には、

(借方) 現金過不足 ××× (貸方) 現   金 ×××

と現金過不足勘定で一度振り替えられてしまっているので、
まずは現金過不足勘定の取り消しをします。

(借方) △△△△△ ××× (貸方) 現金過不足 ×××

そして忘れた原因の仕訳、この場合買掛金の支払いなので、

(借方) 買 掛 金 ××× (貸方) △△△△△ ×××

これをあわせて

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

と仕訳をします。これでもともとするべき本来の仕訳、

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

に戻ります。

もとにもどす仕訳というところがポイントです^^

決算日になった場合の勘定処理

残念ながら、原因不明のまま、決算を迎えてしまう場合もあります。
現金が実際より多かったらラッキー?、少なかったらアンラッキー??です。

繰り返しになりますが、現金過不足勘定はもともと帳簿上の、一時的な、つじつまあわせのためだけの勘定です。「手元にある実際の現金とは金額があわないので、帳簿上の帳尻だけをとりあえずあわせておこう。」という表記なんです。

決算時には、きちんと信頼がある書類にしなければなりませんので、もし、「金額があっていません。」、だけの表記では、書類をみた株主や関係者は、「で、それは儲かったの?どうなの?」となりますよね。なので、決算時には、また仕訳をします。

結論から言うと、増えていた増加分は、「益」になります。理由はなんだかわからないけど、お金増えてました、儲けていました、と。で逆にてもとにある現金が、帳簿残高より減っていたら、「損」を損してました、残念!ということで、決算時に決算書を見た人がわかるようにするためにまた仕訳をしなおすことになります。

<決算時に現金が増えていた、多かった場合の仕訳>

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

<決算時に現金が減っていた、少なかった場合の仕訳>

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××

この仕訳をみてピンときました?理屈を知れば、なんてことはなくなると思いますが、今回の仕訳は少し難しかったと思います。
仕訳に少しひねりが必要でした。取消しと修正を同時に行っているんですね。こういった何かが増えるとかではなく、勘定を移し変える仕訳もテクニックの一つとしてあるんです。現金過不足勘定はいったん記録をしておくためだけの勘定です。「仮勘定(かりかんじょう)」なんていいます。
ですから、現金過不足が借方に登場したからといっても、資産として扱われることはありません。決算時に消滅し、来期には持ち越されない勘定科目なんです。(涙)

(追記)

決算時に過不足が見つかった場合があります。この時は、直接ダイレクトに処理します。現金過不足勘定を経由しない、という考え方です。

  • (借方)
  • ×××
  • (貸方)
  • ×××
  • ×××