裏書手形
手形の割引の他にいつくかある手形の利用方法の一つ、手形の裏書譲渡です。
手形の裏書譲渡
手形はもちろん法律によって支払いが保証されているので、他人にも譲渡、あげることができます。
手形を満期日前に他人に譲渡する場合、手形の裏面に被裏書人(譲受人)を記入して、裏書人(譲渡人)が署名・押印をします。
この氏名・住所などの必要事項を記入することを「裏書」といい、裏書された手形を譲渡することを、裏書譲渡といいます。
裏書譲渡をすることによって、仕入代金の支払や、その他の債務の支払にあてることができます。
手形の裏面に書くんですね。実際に機会があれば、手形をみてほしいのですが、手形の裏に住所・名前を記入する箇所があるんです。そこにあげる人の氏名と自分の名前を書いて、手形を渡すと譲渡契約が成立するんです。
手形の裏面に名前があれば、裏面の名前を持ち主とする、というように法律で決まっているんですね。
これは結構コワイですよ。普段お金をATMから引き出すのだって、キャッシュカードと暗証番号が必要なのに、手形は、ATMの数百倍の金額を扱っているにもかかわらず、なぜだかボールペン一本で他人にあげたりできるんですから。まあそれだけ信頼性がある証拠なんでしょうね。
代金の支払に手形を使うという点で、あとででてくる割引手形と違うところは、割り引いた時に引かれていた、割引料がないことです。額面に書いてある金額の通り、代金の支払に充てることができます。少しお得です。
裏書手形の流れ
今回も同様に、例題をもとに裏書手形取引をどのように仕訳していくのかを確認しましょう。
- 【例題】
B商店では、A商店から商品売上げの支払いのために受取った、約束手形10,000円を、C商店に買掛金支払のために裏書譲渡した。
まずは、登場人物と裏書手形の動きをチェックしましょう。
裏書人・譲渡人と被裏書人・譲受人
最初は商品売買などの支払いが原因で、約束手形の時と同じように、振出人A商店から受取人B商店へ手形が振出されます。
ここまでは約束手形のときと同じで、裏書手形の話はこのあとになります。
裏書をする場合、こんどは受取人だったB商店が、裏書人(譲渡人)になります。新たに受け取るC商店は被裏書人(譲受人)となり、裏書された手形を受取ります。
約束手形をC商店にパスしている感じです。また裏書をしても、価値が目減りすることはありません。むずかしくいえば所有権者、持ち主がかわったということになります。
裏書手形の仕訳処理
裏書の流れがわかってもらったというところで、
では、簿記ではどのように裏書手形の仕訳をするのかということですが、B商店はA商店から手形を受取った時、
- (借方)
- 受取手形
- ×××
- (貸方)
- 売上
- ×××
というように借方を受取手形勘定で仕訳をしているはずです。
そしてその約束手形を裏書によって失うということで、受取手形債権が減るわけですから、受取手形勘定をそのまま減らせばいいわけです。
一瞬、支払債務が増えるということで、支払手形が増えるのか?と考えがちですが、問題文では、「受取った手形を裏書した」ということになっているので、支払手形はふやさないんですね。
というわけで答えは、
- (借方)
- 買掛金
- 10,000
- (貸方)
- 受取手形
- 10,000
ということになります。またほかに、受取ったC商店は、約束手形を受取った時と同じ仕訳をして、銀行に取立依頼することになります。