商品売買
あらたな章に入ります。次は、お店や企業がおこなう経済事象のなかの重要な取引、商品売買についてです。
すぐに、簿記で行われる商品売買についての話をしたいのですが、その前に確認のため、まず商品流通のしくみとその過程で、儲けはどのように発生するのかという一般的な経済の知識を知っておいてほしいんです。
商品売買の基本
商売の基本は、商品を売って儲けを得ることで成り立っています。商品の仕入は安く仕入れ、高く売ることが基本です。
例えば家の冷蔵庫に入っている、八百屋さんで商品として売られている、りんごがわたしのてもとにあるとして、私のてもとに届くまで、生産者⇒小売店⇒消費者へと、いちばん単純ですが、流通経路をたどっています。
消費者がりんごを手にする前に、小売店がりんごを手にし、その小売店の前に、農家の生産者がりんごを手にしています。まわりまわっています。これは普通の経済的な出来事ですね。
これをふまえて、注目していただきたいのが、商品の価格、売値の中身についてです。りんご一個が、物の値段が一体どのように決まるのか?ということです。
商品の価値は、いろいろな理論が経済学や経営学の中で研究されていますが、理論はとばして結論から言うと、
売値=原価+利益
という方程式で成り立っています。物の値段は、原価と利益からできているんです。簿記検定試験では直接出題されませんが、重要な方程式ですから覚えておいてください。
- 原価
原価というのは、生産や販売に要した費用を、単位当たりに計算した値で、いうならば費用のかたまりみたいなものです。さきのりんごの話でいうと、生産者とりんごとでの関係でしたら、りんごの原価は水道代、りんごを育てる肥料代、畑を借りていたら畑の賃借料、人を雇っていたらそこで働く労働者の給料、作業機械などなど・・・がすべて原価として考えられます。
- 利益
利益はもうけで、収入から費用を引いた残りのことですね。売値から原価を引いた残りが利益です。
- 売値
では売値はどのように決まるのかというと、みなさん知っていますね。しってるハズです。需要と供給の「神の見えざる手」ってやつです。ミクロ経済学では生産者はみずからの利潤を最大化するように行動をするんだそうです。需要と供給によって、商品の販売価格が決定します。
少しでも儲かりたいために、少しでも高く売ろうとするんですね。つまり売る側の人は、「儲けよう」として商品を売るのではなく、「高く売ろう」と行動するんですね。高く売ればそれだけ利益が増えるんだと。
最初に利益ありきで商品が売られているんではないんです。最初に商品を仕入れ、原価が決まり、次に売値が決まって、最後に利益が出るんです。
また、視点をかえていいかえると、最終的にりんごを購入した消費者はりんごを買う時に、いままでの各お店ごとの原価分と利益分の金額を同時に買っている、ということになります。
はじまりからおわりまでの間に、入る企業が多ければおおいいほど、最終的に値段が高くなります。
その商品売買活動を繰り返し循環させて、会社は発展していくんですね。基本的な経済の話でした。
なぜこのような簿記とは関係のない話をしたのかというと、簿記の意義で説明したように、簿記というのは「経済主体の諸活動を貨幣的または物量的な数値をもって把握し、記録計算を行う技法」だからです。
はやい話、はじめに経済の事象・問題があって、それをどのように記録していくのかという記録法を研究しているのが簿記学なんですね。ですから経済の話をしてからのほうが、理解が早いんです。これを気づくか気づかないか、知っているか知らないかで、学習期間が変わってきます。俗にいう30時間でできる、とか一週間でできる!とかの参考書の類は、経済を知っている人向けに書かれているんですね。また知っている人、気づいた人は一週間でこんなのとれるよーとかいいます。気がつかない人や知らない人は「??」で(´・ω・`)ショボーンとなります。体系的に学習しましょう。
商品売買や有価証券など話を進めていく、学習していくうちに、はなしの内容がすべてバラバラにみえがちですが、すべてが経済活動という企業がとった行動で、つながっていることを常にイメージしながら学習してください。これを知っているかいないかで、学習の負担が劇的に違います。あえて誇張すれば、ネットと受験料だけで合格することが可能です。いや、しようとしなくていいですよ別に、極端な話ですから。
というわけで、この次のページでは何の内容を説明するのか、話の展開が読めますね?このページで、商品を売る、また買うという企業の経済取引の説明をしたので、このページでは企業の商品売買の経済活動をどのようにして簿記として記録していくのか?という話になります。
ちなみに、仕訳以降、個々の説明はすべてこの、経済活動⇒簿記処理、のパターンで説明をしていました。