分記法
商品売買の二つめの記帳方法、分記法について少し説明しておきたいと思います。このページは簿記3級の試験では重要度は低いほうなので、余裕のある方は続けて読んでいただいて、余裕のない方は一通り学習してから戻って読めばいいと思います。
分記法でも売値=原価+利益の方程式はかわりません。そこから始まって、分記法では、どのように記帳されていくのかというところからです。
分記法(口別法)
二つめの記帳方法、分記法は「商品」と「商品販売益」という勘定科目を使い、商品を仕入れた時は借方に記入し、商品を売りあげた時は、商品勘定を貸方へ記入し、差額の販売益(利益)はその貸方に同時に記入する方法です。
仕入・売上勘定科目は使用しません。
商品勘定科目は三分法でいうところの仕入勘定科目にあたります。商品を仕入れたときに、仕入額を記帳していくところも同じです。
それではどのように記帳するのかということですが、商品を販売したときに、売り上げた商品の原価と利益を調べ、商品販売の利益は商品売買益勘定(収益)という別の勘定科目を使用して、記帳していくというのが分記法になります。
この方法では、商品一つについて原価を調べ、販売益を計算しなければならなくなるので、商品売買の記帳に手間がかかり、多くの商品を扱うスーパーなどには不向きな記録法です。
たとえば、商品「A」が売れたら、まず商品「A」の原価を調べます。売値はわかっていますから、そのうちの利益を算出して、利益分は商品販売益勘定を使い、しかるべき仕訳をするということになります。また商品「B」が売れた場合も、同様に原価を調べて仕訳をします。
商品別に分類するので口別計算ともいわれています。口別の「くち」はカレーの甘口・辛口の「くち」と同じ用法ですね。
分記法の勘定処理方法
具体的にどう仕訳をしていくのか確認するために、例題をといてみましょう。
- 【例題】
1月1日 ○×書店は本10冊を商品として1冊あたり2,000円で仕入れ、代金は現金で支払った。
5月20日 上記商品のうち7冊を1冊あたり2,500円で売り上げ、代金は現金で受けとった。
三分法の時と同じ問題を使用しています。
ちなみに決算日の仕訳がなぜないのかというと、商品勘定のなかに利益額が含まれていないので仕訳をする必要がないからです。三分法では、なぜ決算に仕訳が必要だったのかというと、仕入勘定科目のなかに未販売で売れ残った商品がふくまれていたからでしたね。それを繰越商品として今期の利益額の中から取り除くために別勘定に振替えるための仕訳をするひつようがあったからでした。
分記法では、期末に商品勘定の金額には未販売の原価がふくまれていないので、そのまま商品勘定残高=期末商品棚卸高になります。
仕入れ時
仕訳は分割法の場合とかわりません。仕入勘定科目が商品勘定科目に名称がかわったということだけになります。
- (借方)
- 商品
- 20,000
- (貸方)
- 現金
- 20,000
販売時
分記法の販売時の仕訳は三分法の時とは違います。どうするのかというと、分記法の場合は商品が売れた時点で、その商品の利益と原価を調べます。
商品の本2,500円が、現金で売れました、
- まず、商品の原価を調べます。この場合の商品の原価は仕入価格から2,000円です。
- 次に利益を計算します。2,500-2,000=500円ということがわかります。
- 最終的に利益の金額が、7冊売れたので7冊×500円=3,500円を、商品販売益勘定(収益)を使い、仕訳をします。
- (借方)
- 現金
- 17,500
- (貸方)
- 商品
- 14,000
- 商品販売益
- 3,500
分記法の記帳法だと、原価と利益が、商品勘定科目と商品売買益勘定科目とそれぞれ一対一で対応しているので、商品販売益=利益ですから、仕訳をみて利益がある程度わかるので便利です。
また商品勘定は、そのまま期末資産になるので、分記法を採用した企業の帳簿記入は、決算修正仕訳が不要でらくだ、というメリットもあります。
しかし、この方法だと、別の商品が売れたら、同様にまた原価と利益を、一つ一つ原価を調べなけれならないのでめんどうくさいんですね。
このことから、分記法を採用する業種は、少種類の商品を扱う不動産業など、限られてしまっています。