未収入金・未払金

その他の債権・債務という章に入ります。はじめは未収入金・未払金です。

企業は第4章売掛金と買掛金1のページであったような、商品を売買する目的で購入するとき以外、たとえば、新たに工場などを建てるために土地をツケで購入したりまた売却したりすることがあります。

このときに、商品の売買以外で生じた債権・債務の未回収金や未支払いは、商品売買取引によるものとは区別して記帳します。

未回収の金額は未収入金勘定科目(資産)で、未払いの金額は未払金勘定科目(負債)で処理をします。

債権・債務は、売掛金と買掛金1のページで登場したように、相手に何らかの行為を求めることができる権利、行為をしなければならないという義務ということでしたね。

また、売掛金と買掛金のページでは、商品の受け取りと、代金の支払い行為が一致していなかったことが原因で発生しました。

未収入金・未払金はあとで受け取る・支払うというように、売掛金と買掛金のときと債権・債務で性質は同じです。

ですが同じ債権・債務でも、その取引の目的によって簿記では記帳の扱いが異なることになります。

売掛金と買掛金、未収入金と未払金の違い
売主(債権者)
買主(債務者)

なぜ同じ債権・債務なのにもかかわらず目的が商品売買かどうかによって別々に記帳をするのか・・・。どうせなら売掛金・買掛金に含めればいいのでは?と思いますが、なぜ分けるのかというと、売掛金・買掛金に含めて記帳をしてしまうとあまり好ましくないからなんですね。

好ましくないというのは、少し細かい話になりますが、これは、株主など決算書を見る人の立場になっていただければわかると思います。

決算書を受け取った株主などの関係者が気になることは、やはり財産がいくらあるのかということと、いったいいくら儲かったのかということですね。

もう少し細かくいうと、同じ財産の中でも本業のなかでどれだけ生じたものなのか、どういった資産があるのかが気になるはずです。

たとえば、トヨタの株主だったら一例ですが、自動車ローンが債権というかたちで、資産が残ったりしますね。

この際に、営業の範囲内で生じた債権・債務と、その他営業活動以外の取引で生じた債権・債務をひとつの勘定口座だけにまとめてしまうと、その決算書を見た人が、本業の営業力のみではいったいでいくらの資産があるのか、ということが把握しづらくなってしまうんです。

<貸借対照表イメージ>

貸借対照表イメージ

こういった理由で、勘定科目を商品目的で生じた債権・債務なのか、そうでない債権・債務なのか、と分けて仕訳をすることになります。

まあリクツ云々は抜きにして

    • 商品売買から生じる債権
    • 売掛金勘定
    • 商品売買から生じる債務
    • 買掛金勘定
    • 商品売買以外から生じる債権
    • 未収金勘定
    • 商品売買以外から生じる債務
    • 未払金勘定

と、機械的におぼえてしまってもいいかもしれません。

それでは問題を解いてみましょう。

  • 【例題】
  • 7月3日 コンサルタント業を営んでるA社は営業用のトラックをB社から60,000円で購入し、代金は月末に支払うことにした。


    7月31日 A社はかねて購入したトラックの代金を現金で支払った。


    このときのA社、B社それぞれの仕訳をしなさい。なお、B社はA社と同業である。

掛で売却・購入する契約をしたとき、決済したときの仕訳という、未収入金・未払金の典型的な例題です。

まずは買主A社の経理係になった気持ちで考えてみましょう。

買主(債務者)の場合

問題文より、商品売買目的外の債務ということで、科目は買掛金ではなく未払金(負債)を使用します。

A社7月3日

  • (借方)
  • 60,000
  • (貸方)
  • 60,000

買掛金勘定科目ではなく、未払金勘定科目を使用するとによって、商品売買目的以外で生じた支払わなければならない債務があるということが帳簿上わかることになります。

次に7月31日に現金で支払ったということですから、

A社7月31日

  • (借方)
  • 60,000
  • (貸方)
  • 60,000

未払金という債務を減らすと同時に、現金も減らすという仕訳をします。

売主(債権者)の場合

次にB社です。B社は営業用のトラックをA社へ売却したということですが、問題になるのはあとで支払うということですから、売掛金か未収入金の勘定科目のどちらを使えばいいのかということですね。

そこで手がかりはないかなと見てみると、問題文の最後に、「B社はA社と同業である」とあるので、B社は販売目的で売ったのではないということがわかり、使用する勘定科目は未収入金(資産)になり、

B社7月3日

  • (借方)
  • 60,000
  • (貸方)
  • 60,000

となります。

ちなみに営業用のトラックは固定資産ですから、売却をすると通常損益が発生することになるのですが、問題文は触れていないので、損益はなかったとみなして無視をします。

次に現金で支払ってもらったときは、

B社7月31日

  • (借方)
  • 60,000
  • (貸方)
  • 60,000

と仕訳をします。

以上が未収入金・未払金の基本的な記帳のしかたになります。試験もこんな感じで出題されます。