資本金と引出金(ひきだしきん)
簿記3級の資本金についてです。簿記3級の資本金は個人企業を対象とした簿記でした。また資本とは、資産の総額から負債の総額を差し引いた正味の財産のことをいいました。具体的には会社を興した時の出資額とその後の儲けた額の差でした。
個人企業で商売をするためには資本金が必要ですが、事業規模が小さい個人商店などであれば商売を始める時は、はじめに店主のポケットマネーから店の財布に入っていくように、店主個人のお金をお店に入れて、これを資本金として起業します。この店主個人のお金をお店に入れることを「資本の元入れ」と言いますが、資本の元入れをすることによって店主個人のお金と、店に出資したお金が明確に区別されることになり、そうして企業は資本金を元手に経営活動をしていくことになります。
反対にお店の資本金を店主個人のために持ち出して使うこともできます。これを「資本の引き出し」と言いますが、経営者が会社のお金を勝手に持ち出すことは、株式会社の形態ならできないのですが、個人企業なら資本の引き出しをすることができます。
このページでは資本の元入れや引き出しをしたとき、どのようにして仕訳をしていくかを学習していきます。
資本金と引出金のパターンは
- 資本を元入れしたとき
- 現金等を引き出したとき
- ━資本金の減少として処理する方法
- ┗引出金勘定で処理する方法
とシンプルです。
資本を元入れしたとき
- 【例題】
本日、開業にあたり、店主が現金10,000円を資本金として元入れした。
- (借方)
- 現金
- 10,000
- (貸方)
- 資本金
- 10,000
資本金勘定科目は純資産の勘定で、この仕訳をすることにより店主の財産が減り、店の資産が増えたことになります。
現金等を引き出したとき
お話した通り、個人商店では店主が出資者なので、個人的な理由で自由に資本を引き出すことができます。またこれは覚えなくていいですが、資本の引き出しをする理由は、
- ・店主の飲食のための個人的な支出
- ・事業にかかる所得税や住民税の支払い
- ・事業部分の家賃や水道光熱費の支払い
などがあります。
資本金の減少として処理する方法
- 【例題】
店主が私用のため、現金5,000を引き出した。
- (借方)
- 資本金
- 10,000
- (貸方)
- 現金
- 10,000
資本金勘定(貸方)を減らす仕訳をします。
引出金勘定で処理する方法
事業主が現金などの資産を頻繁に引き出す場合は、一時的に引出金勘定科目を使って処理をするときがあります。
引出金勘定は債権でも債務でもなく、資本金勘定科目をマイナスさせている、間接的に控除している評価勘定です。よって、引出金勘定を使っている場合は決算のとき資本金勘定と相殺させる処理をします。ちなみに同じ性質の勘定は、有形固定資産の減価償却累計額がありました。
- 【例題】
店主が私用のため、現金5,000を引き出した。なお、資本の引き出しは引出金勘定を使って仕訳をする。
- (借方)
- 引出金
- 5,000
- (貸方)
- 現金
- 5,000
簿記の検定試験対策で、仕訳問題の中に資本金勘定関係の出題された場合、引出金勘定の指定があれば、指示がなくても引出金勘定を使ってください。なければ資本金勘定を使います。
決算を迎えたとき
上でお話したように、引出金勘定科目は評価勘定なので財務諸表には載せることができません。なので引出金勘定を使って仕訳をしていたお店が、決算を迎えたときは資本金勘定から引出金勘定の分を減らして相殺する処理をすることになります。
- 【例題】
決算日につき引出金勘定の残高は、借方5,000円である。
- (借方)
- 資本金
- 5,000
- (貸方)
- 引出金
- 5,000
引出金勘定科目を使わず資本金勘定を直接引いて処理をしているお店は仕訳の必要はありませんね。